大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)2062号 判決

被告人 寺本正市

〔抄 録〕

一、論旨第一点について。

所論は「原判示拳銃は撃針が折損しており、拳銃としての発射機能を喪つているから鉄屑に過ぎず、銃砲刀剣類等所持取締令にいわゆる銃砲ではない」と主張する。よつて按ずるに、原審鑑定人徳永勲、伊藤眞吉、銅金義一、岩井三郎の鑑定の結果によれば、本件拳銃は、ベルギーのパプリックナショナル会社の製造にかかるブローニング小型拳銃であるが、その撃針が四、五耗程度折損しており、現状のままでは弾丸発射の機能を有していないことが明かである。けれども「故障のため一時銃砲としての機能に障害があつても通常の手入れ又は修理を施せばその機能を回復することのできるもの」或は「故障があつても容易に修理することができ、修理すれば弾丸発射機能を回復するようなもの」は、既に廃止された銃砲等所持禁止令施行規則第一条第一号所定の銃砲に該当することは最高裁判所判例の示すとおりであるところ(最高裁判所昭和二十四年六月十一日判決、同月二十八日判決、昭和二十六年一月十八日決定参照)、その後前記命令に代つて施行された銃砲刀剣類等所持取締令第一条前段の規定は、右施行規則の規定とほぼ同趣旨であるから、前掲最高裁判所判例は現行銃砲刀剣類等所持取締令第一条の解釈についてもまた適応するものと解するのを相当とする。よつて進んで本件拳銃は果して通常の手入れ又は修理によつて弾丸発射の機能を回復できるかどうかについて考えてみるに、原審鑑定人徳永勲及び岩井三郎の鑑定の結果によれば、前記のように本件の拳銃はその重要部分である撃針が折損しているが、これを同一型の部分品と取替えるか、或は撃釘の先端に折損部分をつぎ足すことにより、発射機能を回復しうること、その修理は一般通常人にはできないけれども、一、二発を発射させる程度になおすだけならば、銃砲製造の専門家というような銃砲に関し特別の知識経験をもつていなくても、ある程度熟練した旋盤工であれば、通常の旋盤機械を用いて修理ができること、その修理に要する材料は特殊鋼であることを必要とせず、市販している軟鋼でもこと足りることが認められるから、本件拳銃の修理は比較的容易であり、通常の修理方法によつて弾丸発射の機能を回復するものというべきである。従つて叙上説示の理由により、本件拳銃は、銃砲刀剣類等所持取締令第一条にいわゆる「銃砲」であると解するのを相当とする。所論は、「本件の拳銃の修理は不可能である。仮に修理しても、一、二発の弾丸を発射しうる程度の修理では、拳銃の機能を回復したものとはいえないから、前記取締令にいわゆる銃砲ではない」と主張する。けれども、右取締令第一条所定の「銃砲」たるには「弾丸発射の機能を有する装薬銃砲」であれば足り、必ずしも連続発射の機能を有することを必要としていないことは、同条の文理解釈上明白であるような事実誤認もしくは法令適用の誤りは存しない。所論は独自の見解に立脚して原判決を非難するものであつて採用の限りでなく、論旨は理由がない。

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